2021年6月7日月曜日

協生農業のまとめ

 ・作物ごとの生産量は、畝の地表で栽培する葉野菜が最も高く、白菜など栽培期間に比して面積を多くとるものは相対的に低くなる傾向がある

・麦や米などの穀物や果樹は収穫時期が決まっており、単種で慣行農 法レベルの生産量は不可能だが

・混生状態でマルチとして用いる事で、肥料で肥大させない正常な植物組 織の穀物は栽培可能である。 

・協生農法の日本における生産性は、現時点では伊勢農園において4年間(2010-2014年)に出荷された野 菜類について、一反あたりの収益/維持コスト比で慣行農法の約5倍の実績がある。

・草の管理は、草の種 毎の適性に応じて行うが、基本事項として、多年草は除去し一年草は残す。

・葉、茎、新芽、つぼみ、花、果実、種、根 など、植物 の部位別に活用する。

・活用法も、生食、乾燥してお茶にする、 漬物などの保存食、スパイスなど、食品としてのバリエーショ ンをつける他に、種苗として販売したり、染料や生活資材とし て商品化

・白菜の苗を植え、両脇に大根の種をスジ蒔きするこ とで密生させた

・畝を東西方向に作れば、畝の南側斜面は日向を好む野菜、北側斜面は日陰を好む野菜にするなど、作り分 けが可能

・ミントの密生地帯にフェイジョア、タラノキ。

・夏野菜の種や、アブラナ科大型野菜の種は一 袋の粒数は少なく、単独では野菜マルチ形成 も不可能。

植生交代の利用:例えば、一つの作物種(マ メ)が収穫後枯れる事で、下から出て来る別 の種(ジャガイモ)のマルチになる。 

・作物の育ちやすい環境が出来るまでは、キク科野菜やハーブ類など過酷な環境にも適応でき、かつ虫にも 強い種から始めると初期にも生産性が確保できる。

・キク科野菜:レタス、サラダ菜、サンチュ、 シュンギク、ゴボウ、チコリ、キクイモなど

 ・ニラ、イタリアンパセリ、アスパラガス などの多年草野菜を初期から入れておくことも、中長期的な草管 理を軽減し、収量に貢献する。 

・発芽状態及び収穫に応じて適宜追い蒔き、苗の定植、農園内での苗の移植をする。 

■ 植生戦略

植生戦略立案の原則として、生産企図量に応じて、生産作物、生産面積、必要な種と苗の量 を予め決めて おき、「種と苗の量が足りなかった」という失敗をゼロにすること が重要である。 

・種と苗の量が足りているなら、うまく行かなかっ た場合の原因は、

 植生戦略(植生の配置、遷移の時期)、管理方法、 気候条件 のいずれか

に帰着することになり、建設的な反省と新た な戦略構築が行える。

・各月ごとに、何を主力作物として確実に生産したいかを決める。

・グループA:主力作物のうち植える場所を決めて管理 する必要があり 、確実な収量が期待できるものをグループA、

・グループB:・主力作物にするにはまだ実験不足で収量が期待できないが、 植える場所を決めて管理する必要があるものをグループBとする。

・グループc:下草野菜として適当にばらまいておいてよく 定量的に管理しないものをグループCとする。

・グループD:その他、単発で実験しているものや特 殊例外なものをグループDとする。

 ■例

グループAの例:

 トマト(収量が確実な夏野菜)、

キュウリ、

ジャガイモ、

スナップエンドウ(収量が確実な豆系)、

オク ラ、

シソ(収量が確実な葉もので背の高いもの)、

ニラ(収量が安定な多年草)、

ワケギ(本来は秋冬も のだが、春夏も収穫可能)、

ネギ、ゴボウ、パセリ、

イタリアンパセリ(冬期に収量が確実)、

シマラッ キョウ(通年収穫が可能)、

ヤマウド(春~初夏にかけて新芽を間引くほど収量が増える)、

モロヘイヤ (夏場の草に負けず秋まで収穫可能)、

エンツァイ 


■:グループBの例:

 ナス(収量が確実でない夏野菜)、

ゴーヤ、

サトイモ、

サツマイモ、

ピーマン、

シシトウ、

トウガラシ、 

ズッキーニ、

カボチャ、

マクワウリ、

スイカ、

ダイズ(

枝豆として出荷)、

アズキ、

ササゲ、

ラッカセイ (地表を覆うが強い草には負ける) 


グループCの例: 

ニンジン、

カブ、

ラディッシュ、

レタス類、

コマツナ、

ミズナ、

ミブナ、

チンゲンサイ 


グループDの例:

 コリアンダー(臭いが独特で大量に作っても売り切れない)、

サフラン、

アスパラガス、

ルッコラ、

ハー ブ類


■ 密植

・植生密度を多様化することでリスク分散する。

・例えばオクラは密生して植えれば台風な どの強風にも強いが、オクラが枯れる11月の時期に入れ替わりで 定植できるものが少ないため、次の植生につなぎにくい。

・オクラの 密度を低くすれば、間にレタスなどの苗を小さくとも定植しておき、 

オクラが枯れる時期に植生交代を狙える

・根菜はライン状に配列して他の草の侵入を ブロック

・収穫時に土を掘り起こすこ とを見越して他の苗を植える

・撹乱された 後に発芽しやすいレタスやコマツナの種を まくなど、グループ間の特性を生かしてつな げる戦略がある。

■ 

グループ I: 種をまくことで混生密生させ、早くからの間引き収穫が見込める野菜 

レタス、コマツナ、ハツカダイコン、ルッコラなど一年性の葉野菜中心 

グループ J: ある程度まとめて植えることで、継続的に生産できる環境が構築されていく野菜 キャベツ、ブロッコリー、ハクサイ、カリフラワーなどアブラナ科野菜 インゲンマメ、ダイズ(枝豆)、ラッカセイなどマメ科野菜、パセリ、イタリアンパセリなどセリ科野菜(多年草) 

グループ K: 隙間に植えたり、他の作物が育ちにくい場所に植えて収量を底上げする根菜 ニンジン、ダイコン、ゴボウ、シマラッキョウ、ネギ、ジャガイモ、 サトイモなど 

グループ L: 少量あると便利だが、優占しすぎないように管理が必要なもの 

ハーブ類、ニンニク、ミョウガ、ヤマウド、アシタバ、アスパラガ ス、フキ、イチゴ、サンショウ、花卉類など

■ 草管理

① 一斉草刈り:草が優勢してしまい、野菜を保護するよりも一旦植生を全て刈り取ってリセットした方が 良い場合、地面の高さで一斉草刈りを行う。その後の種まき戦略に応じて、地面の高さすれすれで刈る、 数センチ残す、10 センチ残すなどバリエーションがあり得る。

 ② 野菜丈の草刈り:野菜と草が競合して草の方が高く伸びてきた場合、野菜の丈で草を刈り取ると、草の みにダメージを与え野菜を優勢させやすい。

 ③ 大きな草の撤去:多年草の群落や大きくなりすぎる一年草の株など、目立って強く占拠している草はピ ンポイントで刈る・抜く。 

■ 野生化

・ニラ、ルッコラ、シマラッキョウ、ミニトマ トなどは雑草並みの強さで野生化する。

・スイ カやカボチャは生果から種をとっておいて 蒔くと良い。

・キュウリはゴールデンウィーク より遅く、五月末から六月に木のそばに植え ると、木に絡んでよく育つ。

・トマトは慣行農 地にこぼれ種で出てくる細い苗も引き抜い て移植でき、地這えで夏から冬までブッシュ にできる。

■デッドライン

・3月:春の種まきのタイムリミット。

・4月からは草の勢いが増す ので、発芽しても草に負けるので種でなく苗に切り替える。 

・ 5月初旬(ゴールデンウィーク):夏の実野菜の苗がホームセ ンターなどに出揃う。しかし夏野菜の苗はより遅くに定植した方 が定着・成長が良いので、あくまで流通上のデッドライン。 

・8月第一週:夏の草刈り、根菜系の種まき、秋冬野菜の苗作りの 開始。 

・9月第一週:秋始めの草刈り、秋冬葉野菜種まき、冬野菜苗作りの開始。 

・9月10日:秋の葉野菜の種まきのタイムリミット。 

・ 9月15日:秋野菜苗の生育良否の判断期限。生育が悪ければ、種苗屋やホームセンターなどで苗を入手 する準備をする。

 ・9月30日:秋野菜の苗の植え付けを完全に終了する。 

・10月:発芽定着状況を見て、冬野菜の種まきを始める。 

・10月中旬:冬野菜の苗の定植を終える。成長が見込めるのは11月まで。

・ 翌1月:農園の土木工事、防風柵の設置、竹林の伐採、果樹の剪定・移植、多年草の苗の定植 などは一 月中に行うと2月以降の種まき収穫管理がスムーズ。

・8月9月は、本州(関東̶近畿地方を基準とする)での協生農法において最大の勝負所。

・協生農法は物量で なく情報で生態系をコントロールするため、先手を取るタイミングが何よりも重要。

・機を逃すと労力がか かるばかりでなく、春までの収量に1年規模で影響する。

・ ある戦略が当たらなくても次の戦略に切り替えられるように、4重、5重に先を読んで事前に計画し、作業 自体はなるべく軽く短時間で終わらせるのが本義である。

■ 草

(1) できるだけ草を茂らせる 草の根で土壌構造を形成するため、できるだけ一年草を茂らせる必要がある。そのためには草刈りは遅 い方が良い事になる。

 (2) できるだけ種を早く発芽させる 協生農法では、苗の定植後に水が必要な場合以外は水や肥料を与えないので、成長が遅く、霜が降りて 成長が止まる11月半ばまでに混生密生で収穫できる大きさにする必要がある。そのため、通常の蒔き 時よりも2-3週間早く種まきをする必要がある。

・早く種を蒔く必要があるため、あまり遅くまで草刈り しないでいる訳には行かない。

 (3) できるだけ刈った草を分解させる 草刈りした後の草は、8月中で雨が降ればすぐに分解され、9月頭には天然の腐葉土になる。収量を上 げるために草の分解は野菜が出来る場所でさせた方がよい。

しかし、(1)と(2)を優先し、草が分解される 前に8月中に蒔いた種が発芽させるには、刈り草が邪魔になるので通路にどける必要がある。

9月頭に 種を蒔く場合には刈り草を畝に放置しても分解が間に合う可能性がある。

・ 7月終わりから8月にかけて、ニンジンを初めとする根菜類が蒔き時。

・ 8月中旬は白菜やブロッコリー、キャベツなどのアブラナ科の種。 

・ 9月頭には葉野菜類、だいこんは9月15日まで。 

・ 早めに蒔きたいので8月が種の蒔き時、9月10日がリミット。

・向こう1年分の収量に貢献する大型 野菜の種蒔きは9月頭までに全て完了させる。 

・ 成長が速く、草ごと刈ると枯れてしまう葉野菜(コマツナやハ ツカダイコンなどの下草としてマルチになる野菜を含む)は、 8月終旬~9月頭にかけての夏草最終草刈りの勝負所で蒔く。 

・ 根菜は、何回も時間差で蒔く方が間引き収穫に向いているので、 8月頭~9月頭までいつでも草刈る度に蒔ける。 

・ ネギ、ニラなど二年目以降しか収穫が期待できないものや、キ ャベツやブロッコリーなど苗が小さいままでも翌年収穫を見 込めるものもある。

・一概に全てが大きく育てば良い訳ではなく、 成長に時間差が出来る方が良い。

・トマトの苗は4月から5月にかけてホームセンターに多く出回るが、これら市販の苗の定植で収 穫できるのは7月から8月までに集中する。

・一方で、トマトの苗自 体は自家栽培すれば8月まで育苗可能であるため、8月まで段階的 に時期をずらして苗を植えることで、トマトの収穫時期を 11 月頃 まで長く引き延ばすことが出来る。赤くならない状態でのトマトの 利用も加えれば、12 月まで収穫期間が延長される場合もある。 

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